岩戸に潜む、天照す君よ 我と来い、それがお前の運命だ。 いかにも情熱的な台詞とともに眼前へと差し出されたその手を、しかし自分は決して取ろうとはしなかった。こちらのすげない反応に、しかし闇の王は特に気を悪くした様子もなく、存外あっさりとその身を引いた。 そうか。ならば今とは言わぬ、また来よう。 短くそう告げてすっかり興味が失せたとばかりに踵を返し、さっさと聖堂へと向かう、その足取りには迷いが無かった。想像よりずっと呆気ない幕引きだが、現実とは案外こんなものなのだろう。まさしく人の出会いは一期一会。翠の線が導いたこの不思議な邂逅も、もはやこれまでということだ。 自分はそれ以上何も言わずに、ミヤコ市から去って行く異界の旅人をただ静かに見送る。天乃岩戸はこうして...22Oct2024FANFICシウ綱