岩戸に潜む、天照す君よ 我と来い、それがお前の運命だ。 いかにも情熱的な台詞とともに眼前へと差し出されたその手を、しかし自分は決して取ろうとはしなかった。こちらのすげない反応に、しかし闇の王は特に気を悪くした様子もなく、存外あっさりとその身を引いた。 そうか。ならば今とは言わぬ、また来よう。 短くそう告げてすっかり興味が失せたとばかりに踵を返し、さっさと聖堂へと向かう、その足取りには迷いが無かった。想像よりずっと呆気ない幕引きだが、現実とは案外こんなものなのだろう。まさしく人の出会いは一期一会。翠の線が導いたこの不思議な邂逅も、もはやこれまでということだ。 自分はそれ以上何も言わずに、ミヤコ市から去って行く異界の旅人をただ静かに見送る。天乃岩戸はこうして...22Oct2024FANFICシウ綱
休息はディナーのあとでサガエメラルドビヨンドシウ綱「それじゃまた明日、朝になったらここに全員集合ってことで」「今日は丸一日連戦続きで、さすがにちょっと疲れたわ。おやすみなさい、ツナノリ。シウグナスも。ちゃんと身体を休めるようにね」 そう言って、ひらひらと小さく手を振り、自分達の与えられた部屋へと戻っていくボーニーとフォルミナの二人を、綱紀もまた穏やかに笑って見送る。場所はキャピトルシティ、その高級ホテルのメインロビーだった。 謎の三角形を追い求める彼女達の、パズルピースをかき集めていくかのような不思議な旅の途中。上官への経過報告のため、かの警官コンビは故郷である自分達の世界へと一時的に帰還していた。 フォルミナがぼやいたとおり、この大都市に紛れ込んだ宇宙...23Sep2024シウ綱FANFIC
捨てる男、拾う男サガエメラルドビヨンドシウグナスと綱紀 御堂綱紀などという男は、初めからこの世に存在しなかった。では何者ですら無い自分という人間、その生を許容し得る世界は果たして、数多ある連接世界のいずこかには存在するのだろうか。だが、残念ながら導き出した結論は何も変わらない。そんな都合の良い幸運はどこにも落ちてなどいない。どこにも。*** 己を導く翠の糸、そのどれからも背を向けて、自分は夢中でミヤコ市内の日の当たる場所から逃れるように走り続けた。人通りを避け、より濃い影の落ちる裏路地をがむしゃらに左へ右へと曲がり進む。やがて頭上の空は焼けて夕刻を過ぎ、そして夜が訪れた。 現代社会の例に漏れず、ミヤコ市にも近代化の影響はいたるところに見受けられる。...18Aug2024シウ綱FANFIC
それが友なればゼノブレイド3レクシュル(エイシュル前提)「人の心を失った機械なんて、所詮はそんなもんだろ」 事の始まりにマシューが聞いた言葉は、確かそれだった。場所はコロニー9、その司令室。今日、午前の空は少し曇っていた。 監獄島の頭上高く、オリジンにて待つというアルファへと至るまで、その道程を改めて仲間達と確認し合っていたときだ。明朗快活なレックスにしては苦々しい、その吐き捨てるような口振りが妙に印象的で、だからふいに皆が手を止め、彼の方を見たのだ。「……君はプネウマやロゴスを目の前にしても、そんな言い方をするのか?」 そのすぐ後に聞いたのは、怒りの感情を理性で律したような低い声だった。あまりに凄みのある声色だったので、最初それがあのシュルクの...07Jul2024レクシュルFANFIC
ある野営にてゼノブレイド3レックスとシュルク パチン、と火花が弾ける音で目が覚めた。 火の番を申し出たのは自分からだったというのに、つかの間といえど微睡んでいた失態をレックスは恥じる。慌てて神経を尖らせ周囲の気配を探れば、幸いなことに差し迫るような脅威は感知されない。はあ、と安堵による溜息を一つばかり吐いて、レックスは反射的に持ち上げた腰を再び地面へと下ろした。数刻前と同じく、辺りは変わらず、真空のような静寂に包まれたままだ。 夜間、魔物を遠ざけるため焚べた火は、まだ十分な明るさを保っている。ちりちりとまるで踊るように揺らめく紅い光の先端を眺めていれば、それは否応にも、未だ彼方へと置き去りにしたままの美しき日々を連想させた。 しかし、今は幸せな...24Jun2024レクシュルFANFIC